住宅ローンの金利タイプには、大きく分けて変動金利型と固定金利型があります。また変動金利型のうち、一定期間のみ固定金利型にする固定金利期間選択型もあります。そのほかにも金利ミックス型などがありますが、金利タイプを選ぶ際には、特に変動金利型と固定金利型の特徴やそれぞれのメリット・デメリットを理解することが基本となります。
ここではそれぞれの金利タイプの特徴とメリット・デメリットについて解説します。
変動金利型と固定金利型の特徴
変動金利型と固定金利型の特徴をまとめます。これから住宅ローンを選ぶ人は、金利タイプの特徴をしっかり理解し、ご自身に合った金利タイプを選ぶことから始めましょう。
変動金利型の特徴
変動金利型は、返済期間中に適用金利が変動するタイプです。1年間に2回金利が見直されるため、市場金利が上昇していると、住宅ローンの適用金利も上がる可能性があります。適用金利が上がれば、利息額が増えますので、返済額の上昇につながります。
ただ変動金利型には、一部の金融機関を除き、「5年ルール」と「1.25倍(125%)ルール」を適用していますので、返済額が際限なく上昇するわけではありません。
「5年ルール」は、住宅ローンの適用金利が上昇したとしても5年ごとにしか返済額に反映させないルールで、「1.25倍(125%)ルール」は返済額を上昇させるにしても、以前の返済額の1.25倍(125%)以内におさえるルールです。
固定金利型の特徴
固定金利型は、全期間固定金利型ともいいますが、返済期間中に適用金利が変わらないタイプです。固定金利型は、都市銀行やフラット35を取り扱う住宅金融支援機構が中心に販売しています。
変動金利型と固定金利型のメリット
変動金利型のメリット
変動金利型のメリットは、固定金利型と比べて、当初の適用金利が低く、返済額が少ないことです。返済額は、金利だけでなく、借入金額や返済期間によって異なりますが、金利だけは各金融機関が提示している金利水準で借り入れる必要があります(借入金額や返済期間はご自身で決められます)。
借入金額を3,000万円、返済期間を30年とした場合の、金利による返済額の違いを確認してみましょう。
<金利による返済額の違い>
金利 | 毎月の返済額 | 総返済額 | 利息総額 |
0.25% | 86,506円 | 31,142,160円 | 1,142,160円 |
0.50% | 89,756円 | 32,312,160円 | 2,312,160円 |
1.00% | 96,491円 | 34,736,760円 | 4,736,760円 |
1.50% | 103,536円 | 37,272,960円 | 7,272,960円 |
2.00円 | 110,885円 | 39,918,600円 | 9,918,600円 |
3.00円 | 126,481円 | 45,533,160円 | 15,533,160円 |
表を見ると、金利が下がるにつれ、毎月の返済額や総返済額が減っていることが分かります。借入金額を減らし、返済期間を長くすれば、さらに返済額を減らすことができます。
借入金額や返済期間はある程度決まっていると思いますので、金利の低い変動金利型を選ぶことで毎月の返済額や利息総額を減らすことができるのが変動金利型のメリットです。なお、総返済額は金利が変わらないことが前提となる点に注意が必要です。
<借入可能額>
※毎月の返済額10万円/返済期間30年
金利 | 借入可能額 |
0.25% | 34,679,647円 |
0.50% | 33,423,632円 |
1.00% | 31,090,706円 |
1.50% | 28,975,411円 |
2.00% | 27,054,851円 |
3.00% | 23,718,938円 |
毎月の返済額を10万円、返済期間を30年とした場合、金利差が1%(0.5%と1.50%)あると、借入可能額の差は約445万円となります。
変動金利型を選ぶことで、借入当初の返済額を減らし、融資金額を増やすメリットがあります。
固定金利型のメリット
固定金利型のメリットは、金利が変動しないため、返済計画が立てやすいことです。金利が高く、返済額に負担を感じる場合は一部繰上げ返済をして負担を軽減させることもできます。
変動金利型と固定金利型のメリットについて紹介しましたが、各金利タイプのデメリットとその対策を理解しておけばより安心です。変動金利型と固定金利型のそれぞれのデメリットについて解説します。
変動金利型のデメリット
変動金利型は、返済期間中も金利が変動しますので、金利上昇により返済額が増える可能性がある点がデメリットです。想定していた返済額の上限を超えてしまうと、他の支出にも影響が出てしまいますので、注意が必要です。
金利上昇により返済額が増えることへの対策として、まず事前にしっかりシミュレーションをしておくことです。借入時には、適用金利で返済額をシミュレーションすると思いますが、加えて、金利が上昇した場合の返済額も試算しておけば、金利上昇リスクを実感できるはずです。将来の不確かなリスクは軽視しがちですが、数値化しておくと、どの金利タイプを選べばいいかの判断材料となるでしょう。
固定金利型のデメリット
固定金利型のデメリットは、市場金利が変動しなければ、変動金利型と比べ結果的により多くの利息を支払う可能性がある点です。金利の上昇を気にせず借り入れるための費用ともとらえることができますが、借入当初から返済額には大きな差が出ますので、固定金利型を選ぶことを躊躇してしまうかもしれません。
<金利による返済額の違い(再掲)>
金利 | 毎月の返済額 | 総返済額 | 利息総額 |
0.25% | 86,506円 | 31,142,160円 | 1,142,160円 |
0.50% | 89,756円 | 32,312,160円 | 2,312,160円 |
1.00% | 96,491円 | 34,736,760円 | 4,736,760円 |
1.50% | 103,536円 | 37,272,960円 | 7,272,960円 |
2.00% | 110,885円 | 39,918,600円 | 9,918,600円 |
3.00% | 126,481円 | 45,533,160円 | 15,533,160円 |
先ほどの表で「金利による返済額の違い」を紹介しましたが、変動金利型と固定金利型の金利差による返済額の違いは、同じ表で確認することができます。たとえば変動金利型が0.5%、固定金利型が1.50%だとすると、毎月の返済額が約1.38万円高くなりますので、最初から返済額が高くなることに抵抗を感じるかもしれません。
変動金利型と固定金利型では、変動金利型を選ぶ人が多いですが、この毎月の返済額の差と総返済額の違いが理由だと考えられます。
金利動向を見極める難しさ
変動金利型を選び、金利上昇による返済額の増加への対応として、金利上昇時に借り換える方法があります。借り換えにより、より低い変動金利型を選んだり、固定金利型を選んで以降の金利変動リスクを回避したりしますが、そのタイミングはかなり難しいでしょう。
借り換えた途端、金利が下がることも十分に考えられるためです。
借り換えで固定金利型に変更したあとに金利が下落しても、「損」をしたと考えず、リスクを回避するためと考えればいいでしょう。
おわりに
住宅ローンの金利タイプを選ぶ際には、金利タイプごとの特徴をしっかり理解した上で、返済計画に合わせて選びたいところです。変動金利型は、金利上昇による家計への影響が考えられますので、金利が上がった時の家計への影響もシミュレーションした上で、金利タイプを選びましょう。