宅建業者は、不動産の売買や媒介業を営む不動産業者です。宅建業者は法令に従って不動産取引をしていますので、取引ルールがあらかじめ分かっていれば、不動産業者との話し合いもスムーズに進めることができます。
基本的には不動産取引に詳しくなくても住宅を購入することはできますが、不動産取引のルールを知っておけば、法令順守しているかの判断ができますし、安心して契約に臨むことができます。
不動産取引のルールは様々ありますが、今回は、宅建業者が受け取る報酬と契約の種類について解説します。
宅建業者とは
宅建業者は宅地建物取引業者のことで、不動産の売買や媒介業をする不動産業者です。宅建業者として不動産業務を行うためには免許が必要で、宅建業法に規定されているルールを守って業務をしています。また不動産売買契約の前に個人に対して「重要事項説明」をしなければなりませんが、宅地建物取引士資格試験に合格して登録し、宅地建物取引士証の交付を受けた人がすることになっています。
不動産取引には売買、媒介、代理がありますが、通常は、売買か媒介が中心です。不動産業者が自ら所有している住宅を売却する場合は「売買」、住宅所有者が不動産業者を通して住宅を売却する場合は「媒介」となります。
また新築の建売住宅は「売買」が中心ですが、中古住宅の場合は「売買」か「媒介」となるでしょう。つまり、不動産によって「売買」か「媒介」かが分かれており、代理を含め、「取引の態様」と呼ばれています。
「取引の態様」は、不動産業者に支払う手数料に影響しますので、よく確認しておきましょう。
媒介手数料の上限額
取引の態様が「媒介」の場合、宅建業者に媒介手数料を支払う必要があります。媒介手数料は上限が決められていますので、上限額以内かどうかの確認も必要です。まずは媒介手数料の上限額を紹介します。
<媒介手数料の上限額>
売買代金 | 媒介手数料 |
200万円以下の部分 | 5%+消費税 |
200万円超400万円以下の部分 | 4%+消費税 |
400万円超の部分 | 3%+消費税 |
たとえば、中古住宅の売買代金(税抜価格)が2,000万円の場合、200万円×5%+200万円×4%+1,600万円×3%=66万円(+消費税)となります。ただほとんどの取引で売買代金は400万円を超えますので、「売買代金×3%+60,000円」で求めることもできます。
媒介手数料についての注意点
先ほど紹介した媒介手数料は、上限額です。手数料は双方の同意で決めるものですので、交渉してみるのも一つの方法です。またこの手数料は成功報酬です。不動産媒介業者は不動産の取引が成立したときに初めて手数料を請求することができますが、手数料の受領について、契約成立時に半額、引き渡し完了時に半額としています。完全に住宅が手に入っていないのに手数料を支払うのが心配な方は不動産媒介業の担当者に相談してみましょう。
また媒介手数料は、費用を含めた金額です。不動産取引成立までにかかる費用も含まれていますので、不明な手数料があれば必ず確認するようにしましょう。
媒介手数料についての変更点(売主対象)
昔ながらの住宅やお気に入りの空き家を希望する人もいらっしゃるでしょう。管理の行き届いていない空き家を有効活用するために、様々な特例の創設や税制改正が行われています。媒介手数料についても変更され、不動産媒介業者が売主から依頼を受ける場合、調査費用などを上乗せできるようになりました。400万円以下の部分について手数料が変更されていますので、ご確認ください。
<媒介手数料の上限額(低価格の空き家等の売却)>
売買代金 | 媒介手数料 |
200万円以下の部分 | 18万円+消費税 |
200万円超400万円以下の部分 | 18万円+消費税 |
400万円超の部分 | 3%+消費税 |
この手数料は不動産媒介業者が売主に請求できる金額ですが、以前よりも不動産媒介業者の現地調査費用や交通費の負担が減りますので、空き家の流通が増え、希望する住宅が見つかりやすくなるかもしれません。
媒介契約の種類
不動産媒介業者に住宅を紹介してもらう場合、媒介契約を結びます。媒介契約を結んで依頼する業務の範囲は次のとおりです。
・住宅の紹介
・売却相手との交渉
・重要事項の説明
・売買契約の締結と書面交付
・決済、引き渡し
手数料の高さばかり気になるかもしれませんが、高額な買い物をしますので、将来のトラブルを避けるためにも、しっかり手数料を支払い、手数料に見合う業者を探すことも大切です。
また媒介契約には、3種類あり、状況に応じて選択します。
<媒介契約による特徴>
契約形態 | 有効期限 | 契約締結後、他社へ依頼することができるか | 自分で見つけて取引できるか | 報告義務 |
専属専任 | 3ヶ月以内 | できない | できない | 1週間に1回以上 |
専任 | できない | できる | 2週間に1回以上 | |
一般 | できる | できる | 義務なし |
媒介契約は、専属専任、専任、一般があり、「専属専任>専任>一般」の順で媒介業者への依存度が高くなります。専属専任・専任では、他社に重ねて依頼することはできませんが、一般では可能です。住宅を同時に探して取引をしたい場合でも、専属専任なら媒介業者を通さなければなりません。
媒介手数料について解説しましたが、媒介業者が受け取れる報酬額は成功報酬です。そのため、不動産媒介業者の立場から考えると、一般契約で他社へ依頼されてしまうとそれまでにかけた費用が無駄になりますので、積極的に探してほしい場合には専属専任や専任が向いているかもしれません。
また一般媒介契約で信頼できる業者かどうかを見極めたうえで、一番信頼できる業者と専属専任契約を結ぶ方法もあります。
おわりに
今回は、不動産媒介業者に依頼した場合の媒介手数料と媒介契約の種類について紹介しました。法令に関する内容ですので、、少し難しく感じた人もいらっしゃるかもしれません。実際には、不動産取引に詳しくなくても問題なく契約締結できる場合がほとんどです。
基本的な不動産取引の知識を理解するとともに、不動産媒介業者を選ぶときには、複数の業者に相談し、比較した上で、決めるといいでしょう。比較すると、法令を遵守しているかどうかも分かると思いますので、宅建業者選びを重視することが大切です。