株式会社ジェネシスジャパン　インタビュー

リノベーション事業を通じて華やかさや感動を提供したいし、感動ももらいたい。若い人たちが「仕方なく買う」という家ではなく、「本当に欲しかった」と思える家を中古住宅プラスリノベーションで実現したい。

東京都八王子市を拠点に、デザイン性の高いリノベーション事業を手掛けるジェネシスジャパン。沖縄でリゾートカフェ＆レストランを運営しているほか、都内で美容サロンも展開するなど、多角的なサービスを通して磨き抜かれたセンスを発信しています。創造性あふれる経営戦略などについて、代表取締役の田中康之氏とマーケティング本部長の井上貴善氏にお聞きしました。

monocla株式会社 代表取締役

那須 岳志なす たけし

旺盛な独立精神で創業　スタートは火災保険から

まずは、創業に至った経緯をお聞かせください。

高校卒業後、宝石の販売会社で訪問営業をしていました。スパルタで厳しい職場でしたが、そこで大きな営業力を養えたのは間違いありません。2年ほど勤めた後、横浜で独立して宝石の訪問販売を続けましたが、特定商取引に関する法律（旧訪問販売法）の改正を機にやめました。その後、マイライン（電話会社選択サービス）の取次店経営を経て就職した米穀店で自動販売機の営業に従事し、自らベンダー会社を興しました。
東日本大震災で物流がストップしたため、当時所有していた約50台の自動販売機はすべて大手のベンダー会社に売却しましたが、転機となったのは、そこで雇っていた従業員から「屋根修理の営業マンに『火災保険を使えばただで直せる』と言われた」と相談されたこと。「まさか」と思って調べてみると、火災保険はあらゆる不測・突発的な事故の損害を補償する素晴らしい保険でした。そこから自分で始めたのがジェネシスジャパンになります。

旺盛な独立精神に驚かされます。スタートは火災保険の領域だったということでしょうか。

そうです。最初は自分で飛び込み営業もしましたし、さまざまな方から紹介も頂きながらやってきました。「屋根が壊れている部分はありますか」と聞いても「ない」と言われるのですが、「無料で点検させてくだい」とお願いすると、応じてくれる方はかなりいました。
そうして、お客様が加入されている火災保険を活用してもらうのに必要な書類をすべて作成するのですが、建築に詳しくないお客様と保険の鑑定人とのやり取りも目の当たりにして「しっかり手助けしてあげなければ」と考えるようになりました。お客様が困っていることをきちんと解決するためには、お客様と保険会社との間にわれわれが入るのが一番と思ったのです。

リノベーションで「華やかさや感動を提供したい」

リノベーション事業に進出された理由も、お教えいただければと思います。

自分は雰囲気の良いレストランやバーに行くのが好きなのですが、それらの空間のデザインは建築でできています。そうしたものを「自分たちでできたら楽しいな」と思って始めたのがリノベーション事業です。
確かに「火災保険活用工事」は人助けになるし、利益も確保できます。しかし、リノベーション事業を通じて華やかさや感動を提供したいし、感動ももらいたい。ですから、これからもリノベーション事業を柱に走っていければと考えています。

御社のビジョン、ミッションもそうだと思いますが、社長の思いが色濃く出ていらっしゃると感じます。

とにかく「好きなこと、格好良いことをやろう」というのがほとんど。わが社が掲げているミッションは「人が輝くステージ創り」ですが、お客様だけでなく、社員や店舗スタッフが輝けるステージを創りたいという意味も込めています。美容サロンは、そうした経緯で始まりました。
現実の厳しさはもちろん踏まえた上で、夢に向かってしっかりと努力し、成功させていくという社員や店舗スタッフがいれば自分と手を組み、そのステージに上げます。さらに、そうした人材が次世代の人材をステージに上げてあげるような連鎖が生まれれば面白いのではないかというのが根本にあります。

多角的な事業展開を通じ、どのようなシナジー効果が生まれているのでしょうか。

例えば、リノベーション事業で獲得したお客様を美容サロンに呼び込む流れをつくることはあまり考えていません。しかし、美容サロンを展開していることで、実際の店舗を構えているという事実がお客様にとって安心材料になっていると思います。
また、店舗内のデザインもわれわれの手でつくり上げたので、将来的に店舗改装の相談などを受けた場合にショールーム的な空間として活用できるのも利点です。

ワンストップの新ブランド開始　ライフスタイルや趣味を住まいに反映

リノベーション事業の中でも、複数のブランドを立ち上げています。それぞれの戦略について、お聞かせください。

井上

ブランドのターゲットは大きく2つに分かれています。まず、屋根リフォームを請け負う「屋根の匠 八王子」は戸建てやマンションを所有している50代以上の年齢層がターゲットです。
また、住宅の1次取得層をターゲットにしたのが新ブランドの「ONE WON」（旧DESIGN-RENOVATION）です。不動産ワンストップサービスを展開し、資金計画から中古物件購入後のリノベーションまで手掛けます。その中で、リノベーション分野で特化するサービスが「WAGAYA」です。資金繰りや物件探し、場所選びといった不動産の入り口段階からすべて対応させていただくばかりでなく、住み始めてから30年、40年後までリノベーションや資産運用も含めて担っていくのが大きなテーマです。

マーケティング本部 本部長
井上 貴善いのうえ たかよし

新ブランドの大きな冠の中に位置付けられる「WAGAYA」は、相当なこだわりとセンスの良さを感じます。

お客様のスタイルを家に出していくのが「WAGAYA」。極端に言えば、猫好きな人が愛猫のための部屋を1つつくってしまうような家です。車やファッションなどと同様、格好良さといったものを家でも提供できたらいいのではないかと考えました。若い人たちが「仕方なく買う」という家ではなく、「本当に欲しかった」と思える家を中古住宅プラスリノベーションで実現したいというのが根本にあります。
半面、住まいの購入には資金づくりなどしっかりとした計画も必要です。「WAGAYA」のお客様には、そうした領域のコンサルティングもさせていただくことになると思います。

客層の厚さがプラス　良質な古家の仕入れに強み

そうしたサービスを提供できる体制、ノウハウが整っているのは、リノベーション会社として素晴らしいことではないでしょうか。

「WAGAYA」は既築の建物の古さを活かしながら味を出すというのが大テーマで、中古物件か、もしくは土地売りで出ている古家など、古民家再生に近いと考えています。
建物を壊したり、新しく何かをはめ込んだりしない分、お客様にも「こだわれるのに意外にリーズナブル」と感じていただけると思います。お客様のライフスタイルやライフストーリーのようなものも住まいづくりに反映させますが、コストがそれほど掛からないので、特殊なこだわりに関する要望にも十分対応できるのが非常に良いと自負しています。
一方、サービスはまだ準備段階で、より充実させなければならない点もあります。例えば、良質な古家を仕入れる上では、地場の不動産会社との情報網強化が欠かせません。幸いにして、不動産会社とは「屋根の匠」の火災保険工事業を通じて密な関係を構築しています。そうした会社とさらに協力を深め、未公開の古家情報などを取得できる体制を徐々に整えていければと思っています。

おっしゃる通り、不動産業界では「買えるかどうか」より「仕入れられるかどうか」が大切と聞きます。

「家を買いたい」というお客様も大事ですが、「売却したい」という相談案件をいくつ持っているかも重要。先ほど申し上げた通り、お客様のターゲットが2層に分かれている、つまり家を売りたい側の年齢層に当たりながら買いたい側の1次取得層にも接触できるのが、われわれの強みです。
個人営業部の社員は古い住宅にお邪魔することも多いのですが、所有者のお話を伺っているうちに不動産会社にも売却を相談していない物件が出てくるケースもあります。住宅のストック市場に対し、２つのターゲットを持って事業を進めているのが、プラスに動いてくるのではないかと期待しています。

新事業展開のカギは「面白さ」　住宅関連のメディア立ち上げも

御社は今後、どのような取り組みを考えていますか。具体的なビジョンがございましたら、お伺いできれば。

スタッフはウェルカムで、積極的に採用を繰り広げるつもりです。自分の体験を通じて「頑張ればこうなれる」ということを伝えていきたいし、若い人たちにもそうなってもらいたいです。
新たな事業に関して言えば、基本的には「面白いな」と思ったことや人に出会えば実行すると思います。例えば飲食店など、そうしたものに長けていて信用できる人と知り合えば、広げていこうかなという。また、具体的なビジョンとしては、住宅をきっかけとしたメディアを立ち上げる構想も温めています。

最後に、monoclaへの期待、要望などをお聞かせください。

住宅業界はユーザーが知らない当たり前のルールが多すぎて、ユーザビリティが足りないのではないかと思っています。ポータルサイトは記事コンテンツも大切ですが、地域に密着している中小の建設会社や不動産会社が業界の「負」を解消しようと集まるようになれば、ユーザーにとって利用価値が高まると考えています。
サイトで登録事業者同士の懇談会ができれば、われわれの業界の真剣さも伝わるだろうし、互いに話をすることでケミストリーが生まれるかもしれません。そういう可能性のあるメディアになっていただけると、すごくうれしいと思います。