スレートやガルバリウム鋼板、和瓦など、屋根にはさまざな屋根材の種類があります。屋根をリフォームする際には、既存の屋根材の種類や劣化状態によって、適切なリフォーム方法や施工費用が異なります。今回は日本の住宅に多い「スレート」と「和瓦」のリフォームについて解説します。
家を雨風から守る屋根は、使用している屋根材や状態によって適切なリフォームのタイミングと工法が異なります。屋根のリフォームの前に家の屋根の種類や特徴、選ぶべき工法を把握しておけば、適正価格でリフォームしてくれる業者も見つけやすくなるでしょう。
今回は、家の屋根が「スレート」と「瓦屋根」の場合に関して、屋根の状態に適したリフォームの工法と素材(屋根材)をご紹介します。
<あなたにおすすめの記事>
ガルバリウム鋼板や化粧スレートなど、おもな屋根材ごとの耐用年数・リフォーム費用を解説します。
屋根材の耐用年数は種類で違う?リフォーム時期や費用の目安を解説
屋根のリフォームは「カバー工法」と「葺き替え」の2種類
屋根のリフォームには、「カバー工法」と「葺き替え」の2種類の工法があります。それぞれの工法の特徴や選ぶ基準、費用の目安は以下のとおりです。
工法 | カバー工法 | 葺き替え |
特徴 | 既存の屋根の上から防水シートと新しい屋根材を重ね葺きする | 既存の屋根を撤去して防水シートと新しい屋根材を施工する |
選ぶ基準 | ・既存の屋根材が瓦でない ・下地の劣化や雨漏りがない | ・既存の屋根材が寿命を迎えている ・すでに下地まで劣化している |
費用の目安 | 80万円~150万円 | 90万円~180万円 |
工法の選び方や費用は、あくまでも目安です。
カバー工法で屋根リフォームが可能でも、将来的に長くその家に住む予定があれば、すべて葺き替えてしまったほうが良い場合もあります。また費用についても、劣化の進行具合や交換する屋根材の種類によって変動します。
次章からは、既存の屋根材に適した工法、交換する屋根の種類について見てきましょう。
<あなたにおすすめの記事>
カバー工法は、古い屋根の上に防水シートと新しい屋根材を重ねるように取り付ける工法です。メリットとデメリットを紹介します。
内部リンク:屋根のカバー工法のメリット・デメリットは?費用や工期も解説
既存の屋根が「スレート」の場合
スレート屋根の耐用年数は20~30年程度です。
築5年目、以降5年ごとにヒビの点検・補修のメンテナンスを行うと、雨漏り等のトラブルを防ぐことができます。また築15年目を過ぎると棟板金と下地の防水シートが劣化するため、カバー工法で交換を行います。
寿命を迎える築30年目に差し掛かると、屋根と下地を全交換する葺き替えが必要です。
スレート屋根を「カバー工法」でリフォーム
おすすめの屋根材 | 耐用年数 | 費用の目安 |
ガルバリウム鋼板 | 30~40年 | 90万円~ |
アスファルトシングル | 20~30年 | 80万円~90万円 |
カバー工法で重ね葺きする屋根材は、原則として既存の屋根よりも軽量である必要があります。なぜなら、屋根が重くなると家の耐震性が低下するからです。
また2004年以前に施工されたスレート屋根には、アスベストが含有されている場合があります。自宅の屋根がアスベスト含有のスレートだった場合は、アスベストを封じ込めるカバー工法がおすすめです。
スレートにカバー工法で施工できる屋根材としては、ガルバリウム鋼板が人気です。ガルバリウム鋼板は屋根材の中でも軽量な部類にあり、耐久性や耐候性に優れています。
ただし、ガルバリウム鋼板を施工するには、職人の熟練した技術が必要です。
アスファルトシングルは、アスファルトやガラス繊維でできたシート状の屋根材です。ガルバリウム鋼板に比べて低価格かつ施工できる業者が多いため、費用を抑えて施工できます。
ただし、アスファルトシングルは断熱効果が弱く、強風に飛ばされやすいというデメリットもあります。耐用年数もガルバリウム鋼板より10年ほど短いため、その家に長く済み続けるのであれば、ガルバリウム鋼板がおすすめです。
スレート屋根を「葺き替え」でリフォーム
おすすめの屋根材 | 耐用年数 | 費用の目安 |
ガルバリウム鋼板 | 30~40年 | 90万円~200万円 |
アスファルトシングル | 20~30年 | 90万円~180万円 |
モニエル瓦 | 20~30年 | 100万円~200万円 |
スレートが劣化していたり、雨漏りが発生していたりする場合は、スレートの葺き替え工事が必要です。カバー工法の場合と同様、ガルバリウム鋼板やアスファルトシングルでも葺き替えができます。
モニエル瓦とは、コンクリートやセメントでできた瓦屋根材です。粘土を主成分とする従来の和瓦(釉薬瓦)よりも耐用年数は短めですが、軽量で耐震性に優れ、リフォーム費用も抑えられます。
瓦が持つデザイン性や重厚感はそのままなので、リフォームを機に家の雰囲気を変えたい場合にもおすすめです。
既存の屋根が「瓦」の場合
瓦には、粘土を主成分とする日本の伝統的な和瓦(釉薬瓦)と、コンクリートやセメントを主成分とするモニエル瓦の2種類があります。前者の耐用年数は50年以上、後者は20~30年です。
結論を言うと、瓦屋根のリフォームにカバー工法は採用できません。ただし、和瓦は「葺き直し」という工法があり、モニエル瓦は「塗り替え」でメンテナンスを行います。
葺き直しは既存の瓦をいったん撤去して下地の補修や補強を行い、瓦をもとに戻す工法です。瓦の耐用年数は50年以上と長めですが、下地の木材は劣化しますので、雨漏り等を防ぐためにも築15~20年目を目安に葺き直しによるリフォームをおすすめします。
一方、モニエル瓦の主成分であるコンクリートやセメントには防水性能がありません。そのため、防水性を備えたモニエル瓦専用の塗料で塗り替えが必要です。
和瓦屋根を「葺き直し」でリフォーム
費用の目安:100万円~200万円
先述したように、和瓦じたいの耐用年数は50年以上ですが、下地の防水シートや野地板は約30年で寿命を迎えます。このタイミングを目安として、瓦屋根の葺き直しを行います。
葺き直しは既存の瓦を再利用するため、葺き替えよりもコストが抑えられます。ただし、割れや欠けがある瓦は新しいものへの交換が必要です。
モニエル瓦屋根を「塗り替え」でリフォーム
費用の目安:25万円~40万円
モニエル瓦の表面をコーティングしている防水塗料は、築10年目あたりから傷み始めます。遅くとも築15年頃までには、モニエル瓦専用塗料で塗り替えを行いましょう。
モニエル瓦の表面は着色スラリーという着色剤が塗装されており、「スラリー層」という呼ばれる層があります。このスラリー層を完全に除去せずに塗り替えをすると、せっかく塗布した塗料が古いスラリー層と一緒に剥がれ落ちてしまうため注意が必要です
瓦屋根を「葺き替え」でリフォーム
おすすめの屋根材 | 耐用年数 | 費用の目安 |
和瓦 | 50年以上 | 100万円~260万円 |
モニエル瓦 | 20~30年 | 100万円~250万円 |
スレート | 20~30年 | 70万円~200万円 |
ガルバリウム鋼板 | 30~40年 | 90万円~210万円 |
アスファルトシングル | 20~30年 | 90万円~190万円 |
屋根の葺き替えは原則として、既存の屋根材よりも重い屋根材は選べません。その点では、和瓦はどの屋根材にも葺き替えることができます。
たとえば、瓦屋根をスレートに葺き替える場合、屋根の重量が約3分の1から2分の1程度まで軽くなります。瓦屋根で耐震性に不安がある場合は、スレートやガルバリウム鋼板など軽量屋根材へのリフォームがおすすめです。
さらに、瓦屋根から軽量な屋根材への葺き替えは、住宅の耐震性能を向上させる工事を行ったとして、自治体の補助金制度を利用できる場合があります。自治体のホームページ等で利用できる補助金制度があるか確認した上で、補助金制度に詳しいリフォーム会社に相談しましょう。
<あなたにおすすめの記事>
瓦屋根の葺き替え工事の費用相場、屋根材による費用の違い、葺き替えにかかる工事期間について紹介しています。
瓦屋根のリフォームにかかる費用は?価格が変動する要因も解説
屋根のリフォームを業者に依頼する前に
お家の屋根を適正な価格や工法でリフォームするには、施工業者の選び方がもっとも重要です。
屋根の劣化や破損が見つかった場合に慌てて業者に依頼するのではなく、まずはできる範囲内で屋根材の種類や状態、雨漏りの有無をチェックします。その上で施工業者に屋根の情報を伝えると、適切な工法を提案してくれるでしょう。
さらに、適正価格でリフォームを依頼するには、複数の業者から見積もりを取って比較検討することが大切です。この「相見積もり」で正確な見積もりを取るためにも、先述した事前の確認が重要となります。
まとめ
既存の屋根に適したリフォームの工法や屋根材、費用の目安について解説しました。
ここまで解説してきたように、屋根材の種類によって適した工法や交換すべき屋根材は異なります。リフォームする前に屋根材の特徴を把握し、耐用年数や価格、デザインなど重視するポイントに合った工法を選びましょう。
またリフォーム業者を選ぶときも、既存の屋根の種類や状態、希望をしっかりと伝えましょう。このひと手間を掛けることで、費用対効果の高いリフォームを行うことが可能です。
monocle(モノクラ)では、全国の屋根のリフォーム事例を画像つきで検索できます。理想の屋根リフォームを実現してくれる施工業者を選ぶためにも、ぜひ当サイトをご活用ください。