屋根には「切妻(きりづま)」や「寄棟(よせむね)」など、形状ごとに名称や性能の違いあります。今回は、住宅に採用されることの多い10種類の形状を取り上げ、それぞれメリット・デメリット、リフォームの費用感も含めて解説します。またリフォーム時に並行して検討したい、屋根の形状に最適な屋根材についても紹介しています。
ご自宅の屋根の形状をご存知ですか?「切妻(きりづま)」や「寄棟(よせむね)」など、屋根の形状にはそれぞれ名称があり、見た目の違いだけでなく耐久性や耐候性、リフォーム費用なども異なります。
今回は屋根のリフォームを検討するときに確認しておきたい、屋根の形状と屋根材の種類について解説します。
屋根の形状10種類
ここでは、日本の住宅の屋根に採用されることの多い10種類の形状を紹介します。
切妻屋根|もっとも一般的で低コスト
メリット | ・屋根工事のコストが安い ・防水処理がしやすい |
デメリット | ・妻側が劣化しやすい ・一般的なデザインのため個性が出しづらい |
屋根リフォームの相場感 | 200万円~400万円 |
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切妻(きりづま)屋根は、日本の住宅でもっともスタンダードな屋根です。「家の屋根」と聞いて多くの方が真っ先にイメージされるのではないでしょうか。
構造や形状がシンプルなため防水処理がしやすく、屋根工事の導入費用・維持費用が抑えられます。一方、妻側(山側)が日光や雨水を直接受けるため、劣化しやすい点がデメリットです。
寄棟屋根|日本の気候に適した屋根
メリット | ・風に強いため屋根や外壁が長持ちする ・メンテナンス費用が抑えられる |
デメリット | ・雨漏りのリスクが高い ・施工費用が高め |
屋根リフォームの相場感 | 300万円~600万円 |
寄棟(よせむね)屋根も、日本の住宅で採用されることの多い屋根です。4方向から屋根面を寄せて支え合う構造をしています。
雨や風を4面で受けるため負担が分散され、屋根や外壁の劣化を防ぎます。これにより、屋根のメンテナンス費用を抑えることが可能です。
デメリットとしては、屋根の頂上にあたる棟(むね)の接合箇所が多いという複雑な構造をしているため、雨漏りのリスクが高くなることです。
片流れ屋根|コストパフォーマンスが高い屋根
メリット | ・屋根工事のコストが安い ・雨漏りのリスクが低い |
デメリット | ・雨樋が劣化しやすい ・屋根がかかっていない側の外壁が雨風に直接さらされる |
屋根リフォームの相場感 | 200万円~350万円 |
片流れ屋根は、傾斜のある片側1面だけで構成される屋根です。近年、このタイプの屋根を採用する住宅が増えています。
シンプルな構造ゆえに施工費用が抑えられ、なおかつ雨漏りのリスクも低いため、コストパフォーマンスの高い形状と言えるでしょう。また壁を高くとることができ、高所に窓を設置して採光しやすい点もメリットです。
ただし、屋根から落ちてくる雨や雪を受け止める雨樋が1ヶ所にしか設置できません。雨漏りを防ぐためにも、雨樋の定期的なメンテナンスが必要となります。
陸屋根|傾斜のない平坦な形状の屋根
メリット | ・モダンな雰囲気になる ・屋上のスペースを有効活用できる |
デメリット | ・排水設備が不十分だと雨や雪が溜まってしまう ・定期的な防水メンテナンスが必須 |
屋根リフォームの相場感 | 350万円~400万円 |
陸(おか・りく)屋根は、傾斜のない平坦な形状をした屋根です。アパートやマンションなどRC住宅(鉄筋コンクリート造)に採用されることが多く、一般住宅ではモダンなデザインとなります。また屋根面が平坦であるため、屋上のスペースを有効活用できます。
一方、傾斜がない構造上、雨や雪が溜まらないよう排水に気を遣う必要があります。放っておくと雨漏りが発生するため、定期的な防水メンテナンスが必須です。
方形屋根|台風に強い頑丈な屋根
メリット | ・雨漏りのリスクが低い ・雨や雪による屋根への負担を軽減する |
デメリット | ・家が正方形に近い形状でないと施工できない ・ソーラーパネルの設置には不向き |
屋根リフォームの相場感 | 300万円~500万円 |
方形(ほうぎょう)屋根は四角錐の形状をした屋根です。
寄棟屋根に似た形状ですが、こちらは棟が少ないため雨漏りのリスクが低く、屋根に降った雨や雪を四方に分散して落とすことができます。ただし、方形屋根にリフォームするには、家が正方形に近い設計である必要があります。
入母屋屋根|日本の伝統的なデザインで和風の住宅に最適
メリット | ・格式高い雰囲気になる ・耐久性が高い |
デメリット | ・施工費用が高い ・定期的な防水メンテナンスが必須 |
屋根リフォームの相場感 | 450万円~600万円 |
入母屋(いりもや)屋根は日本の伝統的なデザインの屋根です。
田舎でよく見かけるタイプで、瓦屋根の和風の住宅にフィットします。雨風に対して非常に耐久性が高く、通気性も確保できるメリットがあります。
デメリットとしては、複雑な構造をしているために施工費用が高額になることです。また棟の接合部が多いため、定期的な防水メンテナンスが必要となります。
半切妻屋根
メリット | 室内面積を変えずに家を建てられる |
デメリット | 棟が多いため雨漏りのリスクに注意が必要 |
屋根リフォームの相場感 | 一般的 |
半切妻(はんきりづま)屋根は切妻の途中から寄棟にしたような形状の屋根です。
建築基準法で高さ道路斜線制限に引っかかる場合でも、半切妻にすれば制限内に収めることができます。ただし、こちらも棟が多いため雨漏りのリスクに注意が必要です。
差しかけ屋根|室内が明るくなる屋根
メリット | ・採光性が高い ・風に強い ・施工費用を抑えられる |
デメリット | 定期的な防水メンテナンスが必須 |
屋根リフォームの相場感 | やや高め |
差しかけ屋根は、2面の屋根が段違いになっている形状の屋根です。
屋根と屋根の間の外壁に高窓を設置して、室内に日光を取り入れることができます。また風にも強く、施工費用も抑えられるところもメリットです。
差しかけの下側の屋根は雨漏りのリスクが高いため、しっかりと防水メンテナンスを行いましょう。
バタフライ型屋根|内勾配の構造で落雪を防ぐ
メリット | ・雪下ろしの必要がない ・モダンな雰囲気に仕上がる |
デメリット | ・雨漏りのリスクがある ・雪の重さに耐えられる強度が必要 |
屋根リフォームの相場感 | 高め |
バタフライ屋根は切妻屋根を反対にしたような形状の屋根です。
雪下ろしをする必要がない形状から「無落雪屋根」とも呼ばれ、積雪地帯の家でよく見かけます。また見た目もモダンな雰囲気に仕上がります。
ただし、中央に雨や雪が溜まるため雨漏りに注意が必要です。雨漏り防止のために排水設備の定期的なメンテナンスを行いましょう。
越屋根
メリット | ・採光性が高い ・存在感のある家になる |
デメリット | ・雨漏りのリスクが高い ・複雑な構造のためメンテナンスコストがかかる ・太陽光パネルの設置に不向き |
屋根リフォームの相場感 | 高め |
越(こし)屋根は、屋根の上にさらに小さい屋根を乗せたような形状の屋根です。
小さい屋根の外壁に窓を設置すれば、室内に多くの光を取り込むことができます。また存在感のある景観になるため、大きな家に採用されることが多いです。
しかし、構造が複雑なため雨漏りのリスクが高く、メンテナンスコストもかかります。屋根の平らな部分が少なく、太陽光パネルの設置にも不向きです。
屋根形状ごとのおすすめ屋根材
屋根の形状を決めたら、次に葺き替える屋根材を選びます。ここまでに紹介してきた屋根の形状ごとのおすすめ屋根材は以下のとおりです。
屋根の形状 | おすすめの屋根材 |
切妻 | スレート ガルバリウム アスファルトシングル 瓦 |
寄棟 | スレート ガルバリウム アスファルトシングル 瓦 |
片流れ | スレート ガルバリウム アスファルトシングル 瓦(防水性能のあるもの) |
陸 | - |
方形 | スレート ガルバリウム アスファルトシングル 瓦 |
入母屋 | 瓦 |
半切妻 | スレート ガルバリウム アスファルトシングル |
差しかけ | スレート ガルバリウム アスファルトシングル 瓦 |
バタフライ | ガルバリウム |
越 | スレート ガルバリウム アスファルトシングル 瓦 |
屋根材ごとに葺き替えの費用のみならず、防水性能や耐用年数、メンテナンス周期も異なります。
いずれの屋根材を採用する場合でも、5年に1回は定期メンテナンスを行いましょう。メンテナンスを業者に依頼するときは、あらかじめ屋根の形状や屋根材の種類、屋根の状態を伝えておくと工事がスムーズです。
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まとめ
日本の住宅に採用される屋根の形状と、おすすめの屋根材について紹介しました。
屋根の形状を変えると、家の雰囲気がガラリと変わるだけでなく、耐久性や耐候性、防水性能も変わります。リフォームで失敗しないためにも、屋根の施工実績が豊富な優良業者を選びましょう。
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