「壁のない家」とは、壁で仕切られた従来の2LDKや3DKとは異なる、広々としたワンルームの家のことです。壁を撤去することで開放感が生まれ、おしゃれで明るい空間が演出できます。今回は「壁のない家」のメリットやデメリット、リフォームのアイデアをご紹介します。

近年、仕切りを撤去した家づくりを目指す「壁のない家」に注目が集まっています。
室内の壁を撤去することで開放感がもたらされ、各部屋へのアクセスも容易になります。
一方で、個人のプライバシーが守られない、冷暖房効率が悪くなるといったデメリットも見逃せません。
今回は従来の間取りにとらわれない新しい家づくりのスタイル、「壁のない家」について解説します。
「壁のない家」とは?
従来の家の間取りは、「3DK」や「2LDK」のように、リビング・ダイニング・キッチン(LDK)と居室を壁で間仕切りするのが一般的です。
たとえば、「2LDK」は広々としたLDKと、壁で仕切られた居室が2部屋の間取りを指します。
「壁のない家」は文字どおり、部屋と部屋とを間仕切りしている壁を取り払い、広々として開放感のあるワンルームにした家のことです。
「0LDK」とも言われ、LDKと寝室や書斎、子供部屋などが1つの広い空間に含まれます。
ただし、トイレや浴室、洗面所は従来と同じく壁と扉で仕切られています。
注文住宅であれば、部屋を間仕切りしない0LDKを前提とした設計ができます。
建売や新築マンションは0LDKの物件が少ないため、購入後にリノベーションをするのが一般的です。
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「壁のない家」のメリット
壁のない家を作ることで、次のようなメリットに期待できます。
・部屋全体が広く見える
・「回遊動線」で移動のストレスを解消できる
・おしゃれな空間を演出しやすい
・家族の存在に気づきやすい
それぞれのメリットについて、ポイントを解説していきます。
部屋全体が広く見える
LDKを中心としてすべての居室空間が壁で区切られていないため、部屋が明るく開放的になります。
スペースを広く使うことができ、ホームパーティーを開いたり、お友達家族とお茶したりといったフレキシブルな使い方も可能です。
LDKと2階部分を吹き抜けにすれば、昼間は照明を付けなくても部屋全体が明るくなり、光熱費の節約にもつながります。
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「回遊動線」で移動のストレスを解消できる
回遊動線とは、家の中に行き止まりがなく、部屋から部屋へとぐるぐる動き回れる動線のことを指します。
一般的な家の間取りは部屋と部屋が壁や柱、あるいは戸で仕切られています。
一方、回遊動線は移動を遮る壁がないため、1つの部屋から複数の場所へアクセスが可能です。
ぐるぐると回遊できることで、日常の生活や家事のための移動をショートカットできます。
また忙しい時間帯に渋滞が起きにくく、移動のたびに家族がすれ違うストレスがありません。
回遊動線で家事の時間短縮ができ、住まいの快適さが向上します。
おしゃれな空間を演出しやすい
壁のない家は、一般的な家では実現が難しいおしゃれな空間を演出できます。
仕切りがないため家具やインテリアを自由に選ぶことができ、コーディネートの幅が広がります。
さらに、壁のないLDKは吹き抜けと組み合わせると効果的です。
床面積が狭くても、開放感があってラグジャリーな空間になります。
家族の存在に気づきやすい
壁や柱で仕切られていないため、子どもや高齢者が部屋のどこにいても目が行き届きます。
料理をしながらリビングで子どもを遊ばせたり、家事をしながらも家族の存在を感じたりして、セキュリティー面でも安心です。
部屋を仕切る壁や柱がないことで、自然と家族のコミュニケーションが増えるというメリットもあります。
「壁のない家」のデメリット・注意点
さまざまなメリットが得られる「壁のない家」ですが、以下のようなデメリットや注意点も把握しておきましょう。
・家族のプライバシーが確保しづらい
・料理のにおいや煙が部屋全体に広がりやすい
・冷暖房効率が低下する
それぞれのデメリットを対処法と合わせて解説します。
家族のプライバシーが確保しづらい
壁や柱で仕切ることがないため、家族のプライバシーが確保しづらくなっています。
たとえば、在宅ワーク中に家族が観ているテレビの音が聞こえてきたり、1人になりたいときに家族の気配が気になったりすることもあります。
壁のない家で家族のプライバシーを確保したい場合は、可動式の間仕切りの設置がおすすめです。
部屋を仕切りたいときにだけスライドさせて、一時的にプライベートな空間を作ることができます。
アコーディオンカーテンや折りたたみ式のパーテーションであれば、省スペースで収納が可能です。
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料理のにおいや煙が部屋全体に広がりやすい
空間を仕切る壁がないということは、キッチンから立ち上るにおいや煙が部屋全体に広がりやすくなるというデメリットを生みます。
インテリアや洗濯物などにイヤなにおいが染み付かないように、しっかりと換気をしましょう。
よりしっかりとにおいや煙を対策するなら、半個室タイプのキッチンにしてみるのもおすすめです。
キッチンの周りだけ仕切られることで、ニオイや煙が換気扇に吸い込まれやすくなります。
冷暖房効率が低下する
広々として開放的というメリットがある反面、壁のない家は従来の間取りよりもエアコンやヒーターなどの冷暖房効率が悪くなってしまいます。
また相性の良い吹き抜けと組み合わせている場合は、暖かい空気が上階にたまりやすくなります。
冷暖房効率の低下を解消するには、二重窓やペアガラス、断熱材を使った断熱対策が必須です。
吹き抜けがある場合は天井にシーリングファンを設置して、冷暖房の風を空間全体に撹拌させると良いでしょう。
いずれにせよ、壁のない家は「夏は暑く、冬は寒い」になりがちなので、家全体の断熱性能および気密性能を高める必要があります。
「壁のない家づくり」のリフォームアイデア
「壁のない家づくり」で住まいを快適にするリフォームのアイデアをご紹介します。
3LDKを0LDKにするリノベーション
一般的な3LDKから、間仕切り壁を撤去して0LDKにする場合、工事費用は800万円~1,000万円が相場です。
工事内容は間仕切り壁の撤去に限らず、排水管工事や配線工事なども必要となります。
このリノベーションの注意点として、耐力壁は撤去できません。
耐力壁とは、基本構造として部屋を支える壁を指します。
万が一壊してしまうと、建物全体が崩壊するリスクがあります。
どうしても撤去したいからと言って自己判断するのではなく、リノベーションの際は必ず専門家に相談して進めましょう。
吹き抜けを作るリフォーム
LDKを吹き抜けにすれば、より開放感がアップします。
天井を撤去して吹き抜けにするリフォームは、100万円~200万円が工事費用の相場です。
さらに、吹き抜けの工事に伴って断熱対策や換気対策、耐震補強も必要となる場合があります。
トータルで500万円以上の工事費用がかかる場合もあるため、具体的な費用については専門業者に現地調査を依頼して確認しましょう。
オープンキッチンにするリフォーム
従来型の壁付きキッチンを、開放的なオープンキッチンにするリフォームです。
オープンキッチンには、キッチンの片側が壁と接するペニンシュラ(半島)タイプ、壁から完全に独立したアイランドタイプの2種類があります。
システムキッチンをどのグレードにするかによりますが、トータル100万円~250万円の工事費用が相場です。
0LDKの広々とした空間との相性が良く、なおかつオシャレで家族とのコミュニケーションの機会も増えるというメリットがあります。
ウォークスルークローゼットを廊下に設置する
壁を撤去してしまうと個室が設けられないため、ウォークインクローゼットが設置できません。
衣類の収納に困ったら、廊下に「ウォークスルークローゼット」を設置する方法で対処できます。
ウォークスルークローゼットとは、人が通り抜けできるタイプのクローゼットです。
廊下の片面を収納スペースとするI型、廊下の両面を収納スペースとするII型があります。
ウォークインクローゼットと異なり、出入り口を2ヶ所にして通り抜けできるため、収納と移動を兼ねることができます。
ウォークスルークローゼットを廊下の幅を変えずに設置する場合、10万円~50万円が費用の相場です。
廊下のスペースが十分でないと幅が狭くなってしまい、かえって使いづらくなるため注意しましょう。
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まとめ
壁のない家のメリット・デメリットや、リフォームの事例について解説しました。
動線を遮る壁を撤去することで、狭小住宅でも十分に開放的で明るいLDKが実現できます。
壁を撤去することで生じるデメリットもありますが、アイデア次第で対処が可能です。
実際の工事では物件の構造や間取りに左右されるため、なるべく複数の業者に見積もりを依頼して、費用とリフォームプランを比較検討しましょう。
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