住宅のリノベーションもトレンドは耐震から省エネへ


住宅の改修工事は、しばらく耐震や構造ばかりに目を向けてきました。またリノベーションの分野でも、省エネに目を向ける人は日本ではまだ少数派でしょう。しかし国の政策は数年前から省エネ化に向かっています。
ここでは、リフォーム・リベーションの分野でも今や欠かせない、住宅の省エネ化について解説します。

小規模住宅の省エネ基準の義務化は延期に

2018年12月6日、国土交通省は予ねてから完全移行を予定していた「小規模住宅の省エネ基準の義務化」を延期すると発表をしました。

今回の延期は、いわゆる「次世代省エネルギー基準(1999年改正)」の次に誕生した「新たな省エネ基準」の完全施行を、住宅部門(300m2以下の戸建・マンション等)について2020年以降に延期するというものです。

このニュースの発表に、建築業界の新築部門だけではなく、リノベーション・リフォームに携わる方をも驚かせました。もちろん、すでに省エネ基準の義務化を想定して現在自宅の打ち合わせを進めている建築主にとっても、この知らせは少なからず衝撃的なニュースとなりました。

新しい省エネ基準の義務化は以前からいわれており、業界では今回の国交省の本気度から察すると、省エネ基準の義務化が規定路線で行くことに疑問の余地もありませんでした。ところが予想もしていなかった展開に、多くの新築・リフォーム関係者は、肩透かしを食らわされたかたちです。

義務化延期の理由は、10月の消費税増税も控えており「コスト増を伴う規制を導入すると、住宅投資への影響が懸念される」としています。
省エネ基準、中規模建物の義務化を決定|SankeiBiz(サンケイビズ)

省エネ基準とは何?

ここで住宅の省エネ基準について簡単に説明しておきます。

省エネルギー基準とは、1979年10月施行の「省エネ法(エネルギーの使用の合理化に関する法律)」に始まり、翌年1980年にはじめての省エネルギー基準が誕生します。そしてこれ以降、1992年、1999年と段階的に強化されました。
とくに1999年の改正で生まれた「次世代省エネルギー基準」は「省エネ法」を全面的な見直しをしたもので、おもに北海道・北東北地域の寒冷地において、その後の高性能住宅の家づくりの大きな指針となりました。

そして「次世代省エネルギー基準」の次に出てきたのが、2013年改正の最新の省エネ基準です。

新たな省エネ基準は、非住宅建築物については2014年4月より完全施行され、住宅についても2015年4月1日から完全施行される予定でした。ところが現時点では強制力を持たず、2020年をメドに義務化する予定とされていたのですが、今回の消費増税(予定)によって、更なる延期となったわけです。

確かに新しい省エネ基準は、その内容からも「コスト増を伴う規制」であることは否めません。とにかく、いまはこれ以降の正式な発表を待つ以外にないでしょう。

今後国の政策に関係なく住宅の省エネ化は進む

ただ、たとえ省エネ基準の義務化が延期となっても、これからの住宅はリノベーション・リフォームも、省エネへの視点は欠かせなくなるでしょう。なぜなら、ここ数年の国交省(経産省)が掲げたZEH(ゼッチ)の影響があります。

今回の延期で国交省は、ZEHに関して特別なコメントは出していません。しかし2020年までにZEH仕様の家を50%とする目標は、現時点では変わらず継続と考えて良いはずです。

ZEHがもたらしたもの

ZEHとは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」のこと。気密・断熱性能を大幅に高め、高効率な住宅設備と再生可能エネルギー機器(+HEMS)を導入することで「正味ゼロ・エネルギーで住める家」の実現を目指す家、またはそのプロジェクトのことです。

国がZEHから手を引くようなことは有り得ませんが、今回の省エネ基準の義務化が延期になっても、ZEH仕様の住宅を作る(あるいはリノベーション・リフォームする)方針は、少なくとも住宅を作る側にしてみればそう簡単には変えられません。

なお話題のZEHですが、2017年度から少しずつ仕様を強化していき、2018年度は省エネ性能が高い住まいづくり(リフォームも含む)を評価する「ZEHビルダー評価制度(ZEHビルダー5つ星表示制度)」を導入しています。

ちなみに「ZEHビルダー評価制度」に該当するには、前年度のZEHビルダー実績を報告するなど、いくつかの縛りがあります。

ZEHは頑張る業者には評価も高いですが、その分果たさなくてはならない義務もかなりあります。ハウスメーカーや地場のビルダーは、そうしたプレッシャーの中でZEH仕様の家づくりを地道に進めています。こうした住宅の省エネ化への流れは、国の政策・方針が多少揺らごうとも止められないでしょう。

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日本の省エネ化相当遅れている?

また日本の住宅の省エネ化は、諸外国に対し大きく遅れているというのは有名な話です。

特にアルミサッシなど、窓の断熱性能は顕著のようで、数値としては「熱貫流率(U値:小さいほど熱を伝えにくい)」を参考にしますが、ドイツではU値が1.3を超えるものが使用禁止となっていても、法的拘束力のない日本では、U値が4を超えるアルミサッシ(単板ガラス)がつい最近まで平気で使われていました。

さらに韓国や中国など、アジアの諸国と比べても日本はかなり見劣りするといわれます。

このような話を聞いてもらえれば、良い意味で「発奮する」前向きな職人さんやビルダーはもっと出てくるでしょう。何もZEHだけが、住宅の省エネ化を推し進めているわけではありません。

太陽光発電を導入することと住宅の性能基準は別物

ただ住宅の省エネ化はリフォームでも新築でも、経済性とバランスを取りながら進めなければなりません。その意味では、省エネ化を間違って進めると、単なる設備過多の計画に終わってしまいます。

たとえば10年や20年で元が取れる投資として、太陽光発電の導入を勧める業者が後を絶ちませんが、FIT制度(固定価格買取制度)が2019年10月より段階的に終焉を迎える中、改めて強化すべきなのが住宅そのものの気密化・断熱化です。

確実に性能(UA値)が取れる断熱材を、適正な厚みで隙間なく施工し(床、壁、天井・屋根)、窓は最低でも樹脂サッシ+Low-Eペアガラス(準防火地域が多い都内ではアルミ+樹脂サッシも可)を採用します。あとは性能の良い1種か3種の換気システムを忘れず設置する。これだけなら、それほど予算も膨らまず、高性能住宅の基本形を手にできます。

何も無理してZEH仕様にする必要はありません。ZEHを推し進める義務を負うのは建築会社ですし、太陽光発電や床暖房システムなどの設備が住宅の性能を上げるのではないからです。建築ユーザーには、正しい順序で根本的な住宅の省エネ化を進めてほしいものです。

まとめ

住宅の省エネ化は生活の質に直接関与する、家づくりにとって大事なテーマです。また生活の質を上げるということは、経済性を無視しては達成できません。最後に、そのことをもう一度強調しておきます。

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