築年数が経った住宅の住み心地を高めたり、購入した中古住宅を好みの間取りやインテリアに変えるといった目的で行うリノベーション。実は天候の特徴や人口、ライフスタイルの傾向などは地域差があるため、地域によってリノベーション時に注意すべきポイントは異なります。
人口が多く住宅数も他の地域よりはたくさんある関東圏は、リノベーションの件数も他の地域に比べて多い傾向にあります。そこで今回は、関東圏におけるリノベーション事情についてご紹介します。
特徴１．住宅の延べ床面積が狭い
総務省が全国を対象に行っている「住宅・土地統計調査」によると、住宅の延べ床面積の平均が全国1位なのは富山県で177.03㎡です。対して、最下位である東京都は90.68㎡で、2倍近い差が出ています。関東圏で見ると神奈川県が46位、埼玉県が43位、千葉県が41位。関東圏の住宅は延べ床面積が総じて全国平均よりも低いことが分かります。
人口が多い上に物理的な土地面積が狭いため一戸あたりの敷地面積が小さくなりがちなこと、関東圏は核家族が多い影響で一世帯あたりの家族数が少なくコンパクトな住宅になる傾向があることなどが原因として考えられます。いわゆる狭小住宅は関東圏に多く、1階ごとの床面積が取れにくいこともあって他の地域よりは3階建て住宅が多いです。
リノベーションで多い内容としては、日当たりが少しでもいい2階や3階にリビングや居室を移動させたり、スキップフロアで内部に変化を持たせたり、吹き抜け空間をつくって高さによる開放感を出したりする傾向が強いと言えるでしょう。
特徴２．周辺環境の影響を受けやすい
関東圏は他の地域に比べると交通網が発達しているため、交通量が多く騒音問題が起こりやすいです。住宅のすぐ近くに幹線道路が走っていてトラックやバスなどのエンジン音が響きやすい、夜間や休日でも交通量が変わらないといった問題を抱えているケースは少なくありません。
また、住宅と住宅が法規制の条件ぎりぎりまで接していて、隣家の生活音が響くという問題もよくあります。こちらはすでに就寝する時間なのにお隣は深夜に帰宅するため車のエンジン音がうるさい、隣の子供が弾くピアノの音で落ち着いて生活できないといったケースもありがちで、深刻なトラブルに発展する可能性もあります。
こうした音に関する問題を解消するために、防音性を高めるリノベーションは比較的多いと言えます。防音性のある壁材を使ったり壁の厚みを増やしたり、窓サッシを二重ガラスにするといった工事を行うことで、外部からの音が入りにくくなります。同時に、自宅から発生する音も周囲に漏れにくくなるため、音によるストレスは軽減できるでしょう。
建て替えがしにくい
一戸当たりの敷地面積が狭い傾向にある関東圏では、その上に建っている住宅の建築面積も狭くなりがちです。建築面積が十分に取れない分、3階建てにするなどして住宅の高さを上げ、延べ床面積を増やすことになります。ただし、自治体で決められている土地の用途によって建てられる建築物の高さの条件は異なるため、自由に住宅の高さを伸ばすことはできません。また、住宅の前面道路の幅によっても住宅の高さが決められています。
住宅を建てる際はこうした法規制の条件をクリアすることが最優先ですから、劣化が激しい住宅をすべて解体して建て替えるとなると、築年数によっては住宅よりも狭くなるケースがあります。たとえば旧建築基準法の時期に敷地ぎりぎりまで使って住宅を建てている場合、現在の建築基準法に合わせて建て替えようとすると狭くなる可能性が高いです。数軒が密集して建てられているエリアの場合は、周辺道路との関係でそもそも建て替えができないというケースもあります。
こうした問題があると、建て替えよりもリノベーションで対応する方法がベストです。基礎や柱、屋根といった構造部分だけ残してスケルトン（空っぽ）状態にし、内部（インフィル）だけを全面的にやり替えるフルリノベーションや、構造部分をきちんと補修しながら間取りの一部を変更して住みやすくするリノベーションなどが多いと言えるでしょう。
その他、住宅が密集していることから地震が来た時の影響は他の地域よりも大きいという特徴もあります。自宅は頑丈な構造になっていても、隣家が耐震性の弱い構造だと地震の揺れ方向によっては倒壊に巻き込まれて破損する可能性は少なくありません。また、地震後にはガス漏れや漏電による火災が発生しやすいため、住宅密集地だと周辺から起こった火災の影響を受けやすいです。耐震性や耐火性についても熟慮する必要があるでしょう。
まとめ
国内でも特に人口が密集し、住宅数も多い関東圏では、住宅の既存部分を上手に生かしながら現在のライフスタイルや家族構成に合わせて作り変えていくリノベーションが人気です。関東圏ならではの問題をしっかりクリアできる技術をもった施工業者と、二人三脚でリノベーションを進めていくことをおすすめします。
