住宅を購入・建築する場合、費用面だけでなく、住環境も気になると思います。病院やスーパー、学校までの距離はもちろん、将来どのような建物が立ち、周辺環境がどのように変化するかも気になるでしょう。
住宅の住みやすさは、建物だけでなく、住環境によっても変わります。将来の地域の様子はどのように変化するかは分かりませんが、住宅の周辺は都市計画法や建築基準法などの法令を基に建てられる建物の種類が決まっています。
そこで、今回は、都市計画法や建築基準法について簡単に解説したあと、住環境に影響をあたえる用途地域と呼ばれる地域を中心に、住宅の購入や取得の際に必要な基本的な知識を紹介します。
都市計画法・建築基準法
都市計画法や建築基準法については、法令ですので苦手意識があるかもしれませんが、不動産取引時の「重要事項の説明」で触れる内容ですので、事前に知っておけば理解はしやすくなるでしょう。簡単に、都市計画法と建築基準法について触れておきます。
都市計画法は、健全な都市の発展を目的とした法律です。たとえば、すでに都市として発展している地域やこれから10年以内に発展させる地域は市街化区域に、発展を抑制させる地域は市街化調整区域と呼ばれています。市街化調整区域には原則、住宅を建てることができませんので、住宅は市街化区域から探すことが多いと思います。また地域にあった建物の建築を促すため、13種類の用途地域を定めていますが、市街化区域では必ず用途地域を定めることになっています。用途地域については、後半で詳しく解説しますが、市街化区域と市街化調整区域を含めた都市計画区域の全体像は次のようになります。
<市街化区域と市街化調整区域の位置づけ>
区域 | 説明 | ||
都市計画区域 | 線引区域 | 市街化区域 | すでに市街地を形成している区域 10年以内に優先的に発達させる区域 |
市街化調整区域 | 市外化を抑制させる区域 | ||
非線引区域 | 区域を定めていない区域 | ||
準都市計画区域 | 放置すると、将来の街づくりに支障が出るおそれがあるため、開発を規制している区域 |
一方、建築基準法は、都市計画法で定められた用途地域内ごとに、建蔽率や容積率を定めています。建蔽率は土地の面積に占める建物の面積で、建蔽率が80%なら土地面積の80%しか建物を建てることができません。また容積率は土地の面積に対する延べ面積の割合で、容積率が高いほど、高い建物を建てることができます。
建築基準法は、たとえばリノベーションで増改築する場合などに影響しますので、用途地域によっては制限を受け、希望通りの住宅に改修できないことも考えられます。そのため、住宅にこだわりがある場合は、土地探しから専門家に相談した方が安心です。
都市計画法や建築基準法によって、計画的に都市が作られていますので、取得する住宅の地域によって、将来の住環境をイメージしやすいかもしれません。ここでは特に、用途地域について解説します。
用途地域
用途地域は市街化区域内に必ず定めることになっています。ほとんどの住宅は都市計画区域内にあり、人が多く集まる場所は市街化区域内と考えていいでしょう。たとえば東京都の場合、西部の山がちな地域や自衛隊駐屯地、河川の周辺などは市街化調整区域ですが、そのほかは市街化区域となっています。
用途地域は全部で13種類あります。大きく分けて、住居系、商業系、工業系があり、おおむね静かな環境で戸建て住宅が多いのが住居系、商業施設やマンションが多いのが商業系、工場などが多いのが工業系となります。
<用途地域>
住居系 | 第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、 第1種中高層住居専用地域、第2種中高層住居専用地域、 第1種住居地域、第2種住居地域、田園住居地域、準住居地域 |
商業系 | 近隣商業地域、商業地域 |
工業系 | 準工業地域、工業地域、工業専用地域 |
第1種低層住居専用地域が閑静な住宅街で中高層の住宅は建築できず、病院やデパートなどの人が多く集まる商業施設(規模の大きい店舗)や遊戯施設も建築できません。この地域から商業系・工業系に近づくにつれ、マンションや商業施設が建築できるようになり、工業専用地域になると住宅は建築できなくなります。
第1低層住居専用地域や第2種低層住居専用地域では、閑静な住宅がとなりますが、病院やデパートなどへのアクセスなど生活するには少し不便さを感じる可能性があります。また住居系に隣接している用途地域であれば、突然工場が建設されたなど、想定外の環境の変化は防げるでしょう。用途地域を意識して、購入予定の周辺地域を調査してみると将来どのように発展していくか、見えてくるかもしれません。
住宅が建築できないのは工業専用地域だけですので、隣接する用途地域を含めて、どのような建物が建てられる確認しておくと安心でしょう。用途地域による建築物の用途制限については、以下のページを参考にしてください。
・東京都都市整備局「用途地域による建築物の用途制限」
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kanko/area_ree/youto_seigen.pdf
住みたい地域の用途地域の調べ方
住みたい地域が市街化区域なのか、どの用途地域なのかは、自治体のサイトで調べることができます。住む地域がある程度決まってきたら、用途地域を調べてみましょう。
<関東地方 地図情報の調べ方>
※埼玉県と栃木県は市区町村ごとに調べる必要があります
おわりに
今回の記事は、法令の内容が多かったため、難しく感じたかもしれません。住宅取得に必要な都市計画法や建築基準法については、重要事項の説明時にも詳しく教えてくれると思いますので、不明な点があればそのときに質問してみてください。
安心して手続きするためには、少しでも不明な点を解消する必要がありますので、不動産販売会社や建築会社の担当者に納得できるまで何度も聞いてみましょう。