2019年10月に、消費税が8%から10%に引き上げられます。住宅リフォームの請負工事については、一定期間までは8%のまま行うことも可能ですが、増税前の駆け込みリフォームには思わぬ落とし穴も潜んでいます。そこでこの記事では、2019年4月時点で8%のままリフォームを行う条件と併せて、増税前にリフォームする時の注意点について解説します。
8%のままリフォームできる期間

増税前の8%という税率でリフォームを行うためには、以下いずれかの条件を満たしていなければなりません。
- 2019年3月31日までに請負契約を交わしたリフォーム
- 2019年9月30日までに引き渡しが完了したリフォーム
記事公開時の2019年4月時点で、8%のままリフォームする方法は「増税が実施される前日の2019年9月30日までに引き渡しを終える」という方法のみです。なお、3月31日までに請負契約を締結している場合は、引き渡しが10月1日以降になっても旧税率が適用されます。
増税前の税率でリフォームや新築工事を済ませようと考える人は少なくはないため、9月30日までにリフォームを終わらせたい場合は、次の項目で紹介する、駆け込みリフォームの落とし穴に十分注意しなければなりません。
増税前の焦った駆け込みリフォームは危険!

増税前は、リフォームや新築工事の需要が一気に高まります。5%から8%に増税された過去の事例を参考にしながら、増税前にリフォームを行う時の注意点を知っておきましょう。
増税前はリフォームの予約が取りづらくなる
消費税は過去にも、2014年4月1日に5%から8%に増税されています。この時、増税前の駆け込み需要で、全国のリフォーム会社や不動産会社に多くの注文が殺到しました。そのため多くの現場で職人不足が相次ぎ、数カ月先まで予約が埋まってしまった施工業者もいます。
増税前のリフォームでは、費用面にまつわるデメリットだけでなく、建築業界の動きも頭に入れて動かなければなりません。
工事期間が従来よりも長くなる恐れがある
過去の増税時には、職人不足で工事が行えなかったケースだけでなく、工事期間が大幅に長引いてしまったケースも多発しました。現場に向かえる職人の数が限られてしまい、本来であれば3人がかりで約1カ月後には完工できたはずが、たった1人の職人で3カ月かけて作業をすることになってしまったケースも実際に起きています。
もし9月30日までの引き渡しを希望していても、リフォーム業者の都合で、期間内にリフォームが終わらないかもしれません。
焦って不本意なリフォームにならないよう注意
増税前にあれもこれもリフォームを済ませておこうと欲張るのは、非常に危険です。焦ってリフォームをすると、必要のないリフォームをしてしまったり、不必要なオプション機能や豪華な素材を選んだりする可能性があります。せっかく経過措置の期間内にリフォームができても、増税後よりリフォーム費用が高くなってしまっては本末転倒です。
増税後は、必要のない箇所にまで手を加えてお金をかけてしまわないよう、普段以上に冷静かつ慎重に計画しなくてはなりません。
増税前後でリフォームの費用差を確認しておこう

増税後は増税前に比べると、支払う金額は当然高くなってしまいますが、具体的にいくら高くなるか知っておくだけでも、無駄な焦りを減らすことができます。リフォーム費用の相場を元に、増税前と後でリフォーム費用の差を比較してみましょう。
※費用差をわかりやすくするため、金額は概算で計算しています。
例1)キッチンを交換した場合
税抜費用 | 90万円 |
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増税前(8%)の税込費用 | 97万円 |
増税後(10%)の税込費用 | 99万円 |
税込費用の差 | 2万円 |
例2)水回り一式をリフォームした場合
税抜費用 | 200万円 |
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増税前(8%)の税込費用 | 216万円 |
増税後(10%)の税込費用 | 220万円 |
税込費用の差 | 4万円 |
例3)家をフルリノベーションした場合(※)
税抜費用 | 1500万円 |
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増税前(8%)の税込費用 | 1620万円 |
増税後(10%)の税込費用 | 1650万円 |
税込費用の差 | 30万円 |
※水回り一式の交換費用、内装工事費用のほか、解体費用、諸費用も含めた金額の一例です
増税後の方が結果的に良いリフォームになるケースもある
増税前と後の費用差を比較すると、確かに税込みの総費用は増税後の方が高くなってしまいますが、決して現実的に支払えない金額ではありません。
もし実施したいリフォームがあって、増税前の金額で実施できなさそうな時は、
- 経過措置に間に合わず、費用負担が増えてしまった
- 無理にプランニングを進めて、後悔だらけのリフォームになってしまった
という失敗のうち、どちらが納得できるか冷静に考えることが大切です。
例えば、家の建て替えは数千万円の費用がかかり、増税後の費用差は数十万円にもなってしまうため、できれば増税前に済ませたいものです。しかし、家一棟を立て替えるためのプランニングにかかる時間や駆け込み需要の余波を考えると、数カ月で引き渡しまで終えるのは非常に厳しく、無理やり工事を進めた結果、施工ミスだらけの家になって後悔するのは家に住むご自身に他なりません。目先の損失に囚われず、じっくり時間をかけてプランニングを行うことが、満足感の大きいリフォームを行う最も確実な方法と言えるでしょう。
おわりに
リフォームや中古住宅の購入など、高額な買い物において焦りは禁物ですが、増税前はより冷静に行動しなければなりません。もし経過措置に間に合わせたい場合は、まずはリフォーム業者に見積もりを依頼して、9月30日までに実施できるリフォームかどうか判断してもらいましょう。もし経過措置に間に合わないとわかっても悲嘆せず、焦った無駄なリフォームでお金を失わないように、しっかりプランニングに時間をかけることが大切です。